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【第15回日本思想史学会奨励賞受賞!】『「ぞめき」の時空間と如来教 近世後期の救済論的転回』法藏館、2020

  • 執筆者の写真: Admin
    Admin
  • 2021年8月19日
  • 読了時間: 3分

 拙著『「ぞめき」の時空間と如来教 近世後期の救済論的転回』(法藏館、2020)が、第15回日本思想史学会奨励賞をいただきました。

日本思想史学会:第15回日本思想史学会奨励賞授賞についてhttp://ajih.jp/shoureishou/15_syoureisyo.html


 研究をはじめてから目標としてきた賞の一つでしたので大変うれしく思います。しかも、京都で一緒に勉強してきた研究仲間と同時受賞できたことで、喜びもひとしおです。


 長い間ご指導いただいた先生方はじめ、さまざまな研究会、学会などを通じてお世話になった皆様、そして審査にあたってくださった委員の皆様に改めて御礼申し上げます。


 これを機会に是非お手にお取りいただければ幸いです。


法藏館:石原和『「ぞめき」の時空間と如来教 近世後期の救済論的転回』

 ※拙著の書評、メディア紹介もまとめてくださっています。


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 以下、簡単に本書の読みどころを紹介させていただきます。


 本書では、1802年の名古屋で開教した如来教を事例として、その展開と歴史的意義を、それが登場した同時空間の宗教動向と関連づけて、「宗派越境的」に論じています。


 一つの教団として如来教を捉えることを避けて、如来教の教祖・信者が、他の宗教とも関わりながら、教線を拡大していったことに注目して、如来教「圏」ともいうべき広がりを明らかにしました。


 例えば、如来教の救済論が実は同時代の浄土真宗の救済論の展開や知識と関わりながら展開したことや、同時代に爆発的に拡大した秋葉信仰と対峙しながら自己を確立していくさまを明らかにしています。

 また、当時流行っていた「良いことをすれば救われる」という考え方との関連や、大地震後の人々の恐れとの関係についても検討しています。

 これらを通じて、近世後期におこった救済を得る方法の大転換(身体実践による救済→心の定置による救済)を明らかにしています。


 こうした「宗派越境的」な分析によって、①従来は教団史的な枠組を前提とし、特別視されてきた民衆宗教像の見直しをはかり、②教団ごとに縦割りにされる傾向がある宗教史の成果を横につなぎ、その時代を論じることで、近世近代移行期の宗教史の全体像の再構築を試みています。


 本書で取り上げた時代は、災害の頻発化、内憂外患の中での社会変化、共同体の崩壊の中にありました。神仏に縋る人々、それに応えようとする救済論の転回には、当時の人々がなんとかして生き抜こうとした足跡が残されています。その意味では、コロナ禍で明らかとなるさまざまな矛盾の中で生きる私たちにとってもアクチュアリティのある内容となっていると思います。


 名古屋の方は、身近な神仏や寺社が多く登場するという意味でもお楽しみいただけるかと思います。

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