top of page

朴炳道『近世日本の災害と宗教ー呪術・終末・慰霊・象徴ー』吉川弘文館、2021年

執筆者の写真: AdminAdmin

朴炳道さんにご恵贈いただきました。ありがとうございます。

いかに近世の人々が災害のトラウマに向き合ってきたかについて、「災害見聞記」、火災、飢饉、災害死者、疫病、災害錦絵と事例に分析されています。自らの死への恐怖にどう対峙し、他者の死をいかに受け入れていくかという普遍的なテーマをもったご著書と思います。先日退職した国立民族学博物館で現在行われている特別展「復興を支える地域の文化」を見てきたばかりで、その展示と関わる内容も多く、タイムリーな内容でした。3.11から10年を振り返る意味でも重要な成果だと思います。  個人的な関心からは、(私自身も宗教と地震についての成果があることから)、災害研究の展開と視点を日本だけに限らず、広い視野から丁寧にまとめられていること、「三界萬霊」や「無縁」の供養を分析しつつ提起された、「「災害死者供養」の功徳がその死者の極楽往生のみならず、供養に参加する生者にとっての二人称の死者、すなわち先祖を含む有縁の死者の極楽往生、参加者の現世利益につながるとのことで、慰霊への参加を強く動機付ける」(p. 185)という「回向の論理」がまさに如来教と関わる内容(本書でも言及されている)で、とても示唆に富んだものでした。


Comments


  • Facebook Clean Grey
  • Twitter Clean Grey
bottom of page